Vol.17 旭酒造「獺祭(だっさい)50」(山口県)


山口県岩国市の山奥に蔵を構える『旭酒造』、純米大吟醸しか造らない酒蔵です。ここで私の愛する『獺祭』は造られています。言わずと知れた近年の人気酒ですが記録に残したく、敢えて紹介させて頂きます。



『獺祭50』は、兵庫県藤田村(特A地区)と村米契約した酒造好適米山田錦を50%精米し低温でじっくり発酵させ、炭素ろ過をせずに瓶詰された純米大吟醸。上立香も含み香も上品で青りんごを思わせる綺麗な吟醸香、程よい米の旨味があり丸みのある味わいで、後味はキリッとしています。そして魅力なのが一升瓶2,835円というコストパフォーマンスの高さ。毎日飲めてしかも旨い・・・私が追い求めていた日本酒そのものなのです。蔵では一番の売れ筋で、私が女将を務める『楽縁』でもまだ大阪に獺祭が少ない頃から定番酒としてお客様にお勧めしてきました。
日本酒は『臭い』『ツンとくる』『美味しくない』と言って敬遠してきた方や、日本酒未経験の方(勿論20歳以上)に飲んで頂くと必ず返ってくる『日本酒って美味しいー。』という言葉。今やこの言葉を聞くのが、店で仕事をする上での快感になってしまいました。日本酒低迷の昨今、私は『一杯を二杯に』増やすのではなく『0杯を一杯』にしたいとの思いでビギナーに優しい店を目指し、日本酒ファンを増やすのが勤めと考えております。そんな『日本酒の入口』で力を発揮してくれる『獺祭50』は私の心強い相方なのです。

『旭酒造』は桜井家の所有になって3代目。現社長の桜井博志氏は物腰柔らかいロマンスグレーの二枚目中年ですが、廃業に追い込まれた逆境を経験した後、この10年の間に生産量5倍、売上4倍と脅威の右肩上がりを成し遂げ、未だ成長中です。ニューヨークだけでも100軒以上のレストランで飲まれ、東京の日本酒市場の1%を占めると言われます。2010年には、経済的・社会的に優れた成果をあげている企業に贈られる『グッドカンパニー賞 優秀企業賞』を受賞され、2011年には大変取得が難しいとされる『コーシャーライセンス』(ユダヤ教に照らして真っ当な食品であ るという基準)も取得。
ひたすら、『酔うため売るための酒ではなく味わう酒を求めて』全て手作業の造り、希少価値を認めず『求められれば切らすことなく』で、新蔵を新設し杜氏を含む全社員で四季を通じて小仕込みで増産をしてきた結果です。

これまで2回蔵にお邪魔をして見学させて頂きました。携帯電話が圏外になる山奥の、新しいとは言え山が直ぐ後ろに迫る小さな蔵で、世界に羽ばたく『獺祭』が生まれているのがミスマッチに感じる程のどかな場所です。
しかし蔵内は実に機能的であり、年中5℃に保たれ整然として清潔な環境の中でイキイキと働く若い蔵人の姿が実に情熱的で清々しく映りました。




2011年9月当店にご来店頂いた桜井社長に伺った話では、今期新蔵旧蔵合わせて約6,000石の製造量になるとか。関西では関東に比べると消費量も出展イベント数もまだまだ多くはないのですが、神戸で毎年行われるきき酒会『日本酒ラバーズ神戸』に出展されるとブースの前にいち早く行列が出来てしまう人気ぶり。昨年2010年よりやっと開催されるようになった『京都 獺祭の会』は、獺祭のフルラインナップと美味しいオードブルがふんだんに頂ける贅沢な試飲会です。そしてついに来年当店でも『獺祭をてっちりで楽しむ会』を開催予定です。≪山口名産のふぐと地元の獺祭≫、最強タッグ間違い無し。

私としては、もっともっと普及率を高め日本中至るところで獺祭が買え、至る所で獺祭が飲める様になり、美味しくて安くてちゃんとした日本酒が普通に誰でも手軽に頂ける、そんな時を待ち望んで止みません。



データ
純米大吟醸 獺祭50
価格=1.8L 2,835円
AL=15.5度
原料米=兵庫県藤田村産 山田錦
精米歩合=50%

旭酒造株式会社
http://asahishuzo.ne.jp/

レポート:大阪市≪楽縁≫女将 尾崎和美
http://www16.ocn.ne.jp/~rakuen/ 

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