Vol.5 菊水酒造「節五郎元禄酒」(新潟県)


新潟市から自動車で30分ほど北上したところにある、城下町新発田市。秋には実った稲穂が一面に広がる平野が、冬には遠くに白く雪化粧した飯豊連峰を望むことができる、自然に恵まれた土地に蔵を構える菊水酒造は、大規模な設備を整えた酒造であり、缶入りの「ふなぐち菊水一番しぼり」シリーズは、どなたでも一度は目にされたことがあるのではないでしょうか。



「ふなぐち」シリーズが発売された当時の企業理念「良いものをより多くの人に」ということが示すように、大規模な設備が整った蔵は、効率化と同時に厳しい品質管理を行っています。大規模な設備を持つ酒造というと、所謂「手づくり」といった響きに比べて「ありがたみ」が薄れてしまうようなところがあるかもしれません。効率性を考えられ、設備が整えられている根源には、人の手をかけなければいけない部分を、より手厚くするという目的のために他なりません。



その一方、敷地内には日本酒文化研究所という施設を持っており、研究所内には有機空間を持つ蔵として日本で最初の認証を受けた「節五郎蔵」が設置されています。

今回は、節五郎蔵で醸す酒、古い資料を紐解きながら江戸元禄期の酒の味わいを再現したという「節五郎元禄酒」を紹介し、菊水酒造の活動についても少し考えを伸ばしてみたいと思います。



グラスに注ぐと微かに山吹色がかった液体は、麹の穏やかな香りが立ち、口に含むとトロリとして甘さが際立つものの、甘いだけでは無く酸味も感じられる力強い味わいで、ベタベタしすぎず、少しの余韻を残しながらキレていきます。精米歩合は90%と、原料米はあえて削らずに、仕込水を少なくする事で濃厚な味わいに仕上っているのが特徴だとのことでした。ちなみに、醸造アルコールは添加されておりません。とっても旨味が濃いので、冷やして飲むのも良し、オンザロックもなかなかでした。個人的にはお菓子作りに使っても楽しそうだなと思いました。情緒溢れる浮世絵のパッケージも、飲み手の雰囲気を一層盛り上げてくれます。

研究所内にはその他、古くからの酒器の数々や膨大な数の日本酒およびそれらを取り巻く食文化の書籍などが所蔵されています。わたしたちの国に伝わる素晴らしい伝統を守ることと、新しいことへの挑戦に真摯に向きあっている菊水酒造が醸す酒、「節五郎元禄酒」を、昔の日本、そして素晴らしい酒造りの技術を受け継いできた先人に思いを馳せながら味わってみるのも、これまた格別です。



菊水酒造
http://www.kikusui-sake.com/

レポート:村山和恵

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